半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
これは、ただ単に『手紙を送る』という偽装行為が必要だっただけだろう。こちらの返事など必要とされていなくて、リリア自身を思って書かれたわけでもない。
……誰かに想われて書かれた手紙なら、喜んで読むのに。
リリアは、そんな思いが不意に脳裏をよぎって、チクリとする。外の人から、そんな手紙なんてもらえないのだろう。
「そんなのをチェックする暇はないの。しまっておいて」
女性使用人が、頭を下げて屋敷へと戻っていく。
それを少し見送ったカマルが、リリアへと目を戻して言った。
「手紙、いいんですか? 婚約者って聞こえましたけど」
「いいのよ」
「でも、お噂は人間界にいるあやかしにも知れ渡っていて、俺も聞いていますよ。姫様が、この国の人間の王子と婚約したって」
どんどん遠くなっていく女性使用人と、しれっと作業に戻っているリリアへ、カマルが落ち着かない様子で視線を往復させている。
「ただの形ばかりの婚約なの。来年には解消よ」
「えっ、そうだったんですか?」
「姫様と『人間の第二王子』は、仲が悪いんですよねー」
アサギが、口を挟みつつ肩を揺らして笑った。
休憩を挟みながら、その日もつつがなく日中の作業をやり終えた。
……誰かに想われて書かれた手紙なら、喜んで読むのに。
リリアは、そんな思いが不意に脳裏をよぎって、チクリとする。外の人から、そんな手紙なんてもらえないのだろう。
「そんなのをチェックする暇はないの。しまっておいて」
女性使用人が、頭を下げて屋敷へと戻っていく。
それを少し見送ったカマルが、リリアへと目を戻して言った。
「手紙、いいんですか? 婚約者って聞こえましたけど」
「いいのよ」
「でも、お噂は人間界にいるあやかしにも知れ渡っていて、俺も聞いていますよ。姫様が、この国の人間の王子と婚約したって」
どんどん遠くなっていく女性使用人と、しれっと作業に戻っているリリアへ、カマルが落ち着かない様子で視線を往復させている。
「ただの形ばかりの婚約なの。来年には解消よ」
「えっ、そうだったんですか?」
「姫様と『人間の第二王子』は、仲が悪いんですよねー」
アサギが、口を挟みつつ肩を揺らして笑った。
休憩を挟みながら、その日もつつがなく日中の作業をやり終えた。