半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「俺っ、明日はきっと成功させてみせます! そうしたらメイを迎えに行って、彼女の父親に認めてもらって。必ずや結婚の吉報を姫様に届けにきます!」

 リリアは、ただただ生温かい微笑みを浮かべていた。

 ――正直、内容は頭に入ってこなかった。

 もふもふ狸が、人間の言葉を喋って小さな右前足を上げ、もっふもっふとソファの上で小さく揺れている様子を見つめてしまっていた。

 台詞は立派なのだけれど、落ち着きがない子供みたい小動物が、そこにいる。

 アサギが、かなり呆れた感じで小さく溜息を吐いていた。

 今夜もリリアの大きなベッドに、用意されていた枕がアサギの手で三つ並べられた。真っ先「わーい!」とカマルがベッドへ飛び込んで、アサギに無言で拳骨を落とされた。

「……学習しないわねぇ」
「彼は狸の中でも、一番の阿呆なんでしょうね」

 リリアは、自分もまだちょくちょく同じことをやって叱られているので、それ以上は何も言えなかった。

 大きいベッドにボフンッとやる。それが楽しいのは仕方ない。
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