半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
そのサイラスの手が、いつの間にか止まって、不穏な空気が増す。
居合わせている部下の何人かが、もう気付かないふりもできず、気にしてちらちらと視線を向けた。
「……なんで返事がこないんだ」
舌打ちするようにサイラスの口の中で呟かれる。
聞こえた護衛騎士で副官のコンラッドが、察した様子で彼を見た。
「殿下が、また返事不要という内容で送ったから、ではないですか?」
「返事をしろ、と、ちゃんと書いた」
ぶすっとサイラスは答えた。
リリアが、一週間も王都に足を運ばないのも久しい。社交に積極的に参加する前はよくあったことなのだが、ここ最近は気が気でない。
――妖狐の血が半分流れた、知的で美しい伯爵令嬢。
これまで男性ばかりが目立っていた学院にて、女性の中で群を抜いて成績優秀で、リリアの評価は上がっていた。
好奇の目にさらされても、物怖じしない堂々とした振る舞い。鼻にもかけないと言わんばかりの態度は、彼女がまとう独特の空気感で許されている。
妻として迎えても、十分に務まるだろうと令息達の見方は変わっていた。
居合わせている部下の何人かが、もう気付かないふりもできず、気にしてちらちらと視線を向けた。
「……なんで返事がこないんだ」
舌打ちするようにサイラスの口の中で呟かれる。
聞こえた護衛騎士で副官のコンラッドが、察した様子で彼を見た。
「殿下が、また返事不要という内容で送ったから、ではないですか?」
「返事をしろ、と、ちゃんと書いた」
ぶすっとサイラスは答えた。
リリアが、一週間も王都に足を運ばないのも久しい。社交に積極的に参加する前はよくあったことなのだが、ここ最近は気が気でない。
――妖狐の血が半分流れた、知的で美しい伯爵令嬢。
これまで男性ばかりが目立っていた学院にて、女性の中で群を抜いて成績優秀で、リリアの評価は上がっていた。
好奇の目にさらされても、物怖じしない堂々とした振る舞い。鼻にもかけないと言わんばかりの態度は、彼女がまとう独特の空気感で許されている。
妻として迎えても、十分に務まるだろうと令息達の見方は変わっていた。