半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
『ああいう騎士様もいいわよね。かっこよくて』
……あんな顔もできるじゃないか。
先日見た光景を思い出して、サイラスは苛々して執務机の上を指先で叩いた。
熱が出て学院を休むくらいなんて、大丈夫なのか?
あまり、あやかしについては知らない。――妖狐のことだけしか、サイラスは知らない。
「そういえば殿下、エルバレス公から届いた香、どうします?」
「不要だ。欲しいならもっていけ」
「ええぇ、でもこれ、多分殿下のことを慕ってる娘さんのことがあって、彼も贈ってきたものかと」
最後の箱の中を仕分けしていた書記官の男が、えっ、と戸惑いをあらわに言った。別部署から寄越されて手伝っている彼の手元を、魔法部隊軍と、第二王子執務室担当の部下らも覗き込む。
「私が勝手にそんなことをやったら、上司に叱られてしまいます」
「こういう箱に入ってるのは、大丈夫だって、新人」
「これ、結構いい香りなんですけどね。社交界でも人気の一品ですよ」
続けてそう言われたサイラスは、ぶすっとした顔でよそを見ている。
……あんな顔もできるじゃないか。
先日見た光景を思い出して、サイラスは苛々して執務机の上を指先で叩いた。
熱が出て学院を休むくらいなんて、大丈夫なのか?
あまり、あやかしについては知らない。――妖狐のことだけしか、サイラスは知らない。
「そういえば殿下、エルバレス公から届いた香、どうします?」
「不要だ。欲しいならもっていけ」
「ええぇ、でもこれ、多分殿下のことを慕ってる娘さんのことがあって、彼も贈ってきたものかと」
最後の箱の中を仕分けしていた書記官の男が、えっ、と戸惑いをあらわに言った。別部署から寄越されて手伝っている彼の手元を、魔法部隊軍と、第二王子執務室担当の部下らも覗き込む。
「私が勝手にそんなことをやったら、上司に叱られてしまいます」
「こういう箱に入ってるのは、大丈夫だって、新人」
「これ、結構いい香りなんですけどね。社交界でも人気の一品ですよ」
続けてそう言われたサイラスは、ぶすっとした顔でよそを見ている。