半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 コンラッドが小さく苦笑し、彼らを制した。

「いいんですよ。その香りは、殿下は使いません。〝狐〟が苦手とするタイプの匂いですから」
「へ? 狐、ですか?」
「嫌悪感を覚えて近付かないそうです」
「コンラッド、やめろ」

 サイラスが、そこでぴしゃりと口を挟んだ。

 学院で一年ぶりの再会となったあと、リリアに避けられまくった。社交の場で二度目に顔を合わせた際も、文句の言葉も面倒になったと言わんばかりに、彼女はやけに去りたがった。

 喧嘩の相手にもならないと思われている?

 もしくは、一欠けらの関心さえ、なくされてしまったのか――。

 三度目の社交の場で顔を合わせた際、一緒にいるのがそんなに嫌なのかと、早々に踵を返したのにカッとなって、売り言葉に買い言葉でリリアを呼び止めた。

 そうしたら、振り返った彼女は、初めて見るやや不調そうな表情を浮かべて、鼻をつまんでいた。

『なんか、この果実の匂いがだめなの』

 全く気を許していない彼女の口から、初めて、そう苦手なものを伝えられた。
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