半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「あの……え、暇なの?」

 リリアはこんがらがってきて、思わずパッと浮かんだ本音の方が口からこぼれ出た。

「なわけないだろう。多忙だ」

 サイラスが、口元をやや引き攣らせて答えた。

 そのまま彼の目が、呑気なポーカーフェイスで心情が読み取れないアサギ、そして同じように原に直で座り込んでいるカマルへと移る。

「また、不似合いなオスを連れているな」

 チラリと一瞥されたカマルが、狐のアサギに睨まれた以上にビクーッとして、身の危険すら覚えた様子で飛び上がった。

 ビビった拍子に、うっかり術が解けて狸姿に戻った。

「なるほど。化け狸か」

 すぅ、とサイラスの目が細められる。

 威嚇するように彼の魔力量が跳ね上がった。ガタガタ震え始めたカマルを、リリアは腕でかばって、自分の妖力で彼の魔力の影響を弾き返した。

「ちょっと、いきなりきて威圧するのはやめて。カマルは弱いあやかしなのよ」
「たとえ世話役の執事だったとしても、それが妖怪国では小さい部類に入るあやかしであったとしても、――不愉快だ」

 かなり辛辣な言葉である。
< 156 / 301 >

この作品をシェア

pagetop