半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「人間には感知が難しいでしょうが、れっきとしたあやかしですよ。『人間の第二王子』殿下は強い魔力の持ち主でいらっしゃいますので、迂闊に触れて、先に目覚めさせてしまいませんように」
「――分かってる。そいつに与えられた条件なんだろう」

 嫌味っぽい口調で言ったアサギに、彼が苛々した声ながら弁えて答えた。

 リリアが結ばれた『逆さ草』の先端を持った。アサギが、てんこ盛りに置かれたそれの前で立って、早速の開始を告げる。

「さて、姫様出番です」
「オッケー、任せて!」
「俺もお手伝いしますっ」

 リリアがふわりと浮かぶと、カマルがアサギと一緒になって、とても長い一本になった『逆さ草』が切れてしまわないようサポートした。

 岩の上まで飛んで、大まかにぐるんぐるんと全体を包み込むように捲き付ける。

 塞がれた道の反対側にも回ってそうした。

 ふと、リリアはそこで振り返った。塞がれた先の道の向こうは、次第に細く、そして緩やかな下り坂になっていた。この先に、化け狸の里があるのか。
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