半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
いつの間にか憧れていた。絵本や小説みたいな、恋。
いつか、どこからかやってきた〝誰か〟が、父や母のように、ここで一緒に生きていていいんだよと伝えるみたいに、好きです、お嫁にきませんか、とリリアに言ってくれるのを、幼い頃に夢みたのだ。
涙を拭うコンラッドが、そうかと察したかのように神妙な表情を浮かべた。
「お嬢様は、恋の相手を人、と考えてくださっていたんですね」
「ぐすっ――悪い?」
「いいえ、全然悪くないです。だってお嬢様は、こんなにも可愛らしい令嬢じゃないですか」
半分は、人の血が流れていることを言ってくれているのだろう。こんな人間も都会にいるんだなと、リリアは胸に込み上げる温かさに落ち着いてきた。
「ありがとう、騎士のコンラッド様」
彼は小説の中の人物ではなくて、ここに生きている別人なのだ。ただただ尊敬と感謝を覚えたリリアは、そこでようやく目の前の人が『現実の人』になった。
あとは自分でできるからと、ハンカチを借りて涙を拭う。
落ち着くまで、コンラッドは待ってくれた。
いつか、どこからかやってきた〝誰か〟が、父や母のように、ここで一緒に生きていていいんだよと伝えるみたいに、好きです、お嫁にきませんか、とリリアに言ってくれるのを、幼い頃に夢みたのだ。
涙を拭うコンラッドが、そうかと察したかのように神妙な表情を浮かべた。
「お嬢様は、恋の相手を人、と考えてくださっていたんですね」
「ぐすっ――悪い?」
「いいえ、全然悪くないです。だってお嬢様は、こんなにも可愛らしい令嬢じゃないですか」
半分は、人の血が流れていることを言ってくれているのだろう。こんな人間も都会にいるんだなと、リリアは胸に込み上げる温かさに落ち着いてきた。
「ありがとう、騎士のコンラッド様」
彼は小説の中の人物ではなくて、ここに生きている別人なのだ。ただただ尊敬と感謝を覚えたリリアは、そこでようやく目の前の人が『現実の人』になった。
あとは自分でできるからと、ハンカチを借りて涙を拭う。
落ち着くまで、コンラッドは待ってくれた。