半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 婚約者でなくなったら、パートナーだからという理由で出席することだってなくなる。用がなければ王都にはこないから、顔を合わせることはほとんどないだろう。

 でも……喧嘩もできなくなるのかと思うと、なんだかしゅんっとした。

 コンラッドを立たせて、何やらぐちぐちと言っていたサイラスが、ふと大人しくし続けているリリアに気付いた。

「なんだ、電撃もしてこないのか?」

 尋ねられたリリアは、ふるふる、と首を振った。

 サイラスが妙な表情を浮かべた。普段なら何か言ってくるのにと、待っているみたいな間に感じた。

 リリアは、ふいっと視線をそらすと立ち上がった。さっき泣いたせいか、なんだか文句の一つも言う気になれない。どうせ喧嘩もしなくなるんだろう。

「それじゃ。――行くわよ、フィン」

 そのまま目も向けずにそっけなく答え、彼の横を通り過ぎた。

 関心さえ持たれなかったみたいな対応に、サイラスが呼び止めるのも忘れて、息を詰めてその後ろ姿を見送った。
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