半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 相応しい婚約者候補がいるのだから、そちらに関しては、引き続きぐちぐち言われるのも仕方ない。
 
 でも、とリリアは思う。

「……彼を慕っているのは分かるけど、嫌味がバカ王子と違って、ほんと嫌」

 リリアは、口元からティーカップを離しながら、こっそり愚痴った。

 あの日、帰宅したあとで一晩考えて、彼と彼女達の何が違うのか気付いた。先日の令嬢達は、リリアを知りもしないで、蹴落とすのに都合がいい女像に勝手に仕立て文句を言ってくる。それが、一番むかつくのだ。

 それはお見合いをした際、サイラスに覚えた嫌悪感と同じだった。

 思い返せば再会以来、彼は勝手な憶測やイメージで、一方的にひどい決めつけの物言いはしてこないでいた。

「だから私、あの時、とくに文句の一つだって浮かばなかったのかしら……」

 リリアはティーカップを戻しながら、コンラッドのところに来た彼との別れ際を思い返した。

 毛嫌いも感じなかった。だから、直前の令嬢達へ向けたみたいな戦う姿勢も取らず、文句も言わなかった?
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