半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 分からない。考え始めると、一日で起こったことがごちゃまぜになってきて、いよいよ情報と感情が混雑してくるのだ。

 サイラスの婚約者になってから、ずっと疲れることばかりだ。

 はぁっと大きな溜息をついたリリアを、ツヴァイツァーがチラチラと見ていた。この二週間よく見ている溜息に、使用人達も気になった様子で目を向ける。

「何かあったのかい?」
「別に、なんともないわよ、父様」

 そわそわと尋ねてきた父のツヴァイツァーに、リリアは椅子に背をもたれつつ、吐息交じりに答えた。

「でも、なんというか、ここ二週間はぐっと大人びたような気がして」

 何か一歩大人になるようなきっかけでもあったのではないかと、父としては心配にもなっていた。

 リリアは、その声を聞いてなるほどと思った。そうか、牽制のようにサイラスに前もって喧嘩を吹っ掛けなかったのは、精神的に少し成長したせいなのか。

 それはいいことである。

 リリアは、母のような女性になるのが目標なのだ。

 冷静沈着で知的。そこにいるだけで、ハッと目を引く妖怪国の立派な女領主。これは学院に行き、社交にも参加することを決めた効果が、出始めているのかもしれない。
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