半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 二階の自室に到着すると、綺麗に整えられたベッドに飛び込んだ。

 ぼふんっ、と体を預ければ、洗濯された良い香りとお日様の匂いがした。毎日ありがとうと感謝を覚えて、ぐりぐりと顔を押し付けしばし堪能する。

 アサギに見られたら怒られてしまうかもしれないけど、彼は一階にいるので平気だ。

 その彼の話によれば、リリアはまだ仔狐なので、やりたくなってしまうらしい。普段から父に抱きつき、他の者に頭を撫でられるのが好きなのも、そうなのだとか。

「普通の令嬢って、なんなのかしらねぇ……」

 令嬢友達なんていないから、リリアはそれが普通なのかどうなのか分からない。

 ただ、ひっついているのを見られて「子供か」と言われるのは想像された。それは嫌なので、父と社交の場に行く時は、しがみつくのを我慢している。

 ――でも、ここ最近は動く気が起きなくて、父や他の人達との接触も少ない。

「相応しい婚約者、か」

 つい、ベッドに頬をあてて呟く。

 公爵令嬢アグスティーナ。人間の中で、もっとも第二王子の相手に相応しいと言われている令嬢。いいところに嫁ぐために努力していることは、対面して分かった。
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