半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 あの美しさも洗練された品も、そして言葉から滲み出る教養も、全て努力のたまものだろう。

「それに比べて、私、はじめっから諦めて、そういう努力なんてしてこなかったものね」

 羨ましいだとか、どうこう言っているところではなかった。ここずっと屋敷で休んでいて、冷静に考えて、ふと気付かされた。リリアが彼女を悪く言える資格なんてない。

 確かに、リリアを好きになってくれる〝人間〟が現れる可能性は、とても低いのかもしれない。

 でも父と母が好き合って、自分が生まれたのだ。そしてこんな自分にも、平気で接して優しくしてくれるコンラッドもいた。

『殿下は困っていらっしゃるでしょうに』

 彼女に言われた言葉が、頭の中にリピートする。

 相手のことを考えて動ける。それが婚約者なのだろう。リリアは偽物だから、全くそんなことにも考え及ばなくて。

「そうよね。母様だって、いつも父様のことを考えてたわ」

 考えすぎたのか。うつらうつらと、瞼が重たくなってきた。ベッドの感触も、安心する匂いも、そして窓からの日差しと風も心地いい。

 気付いた時には、リリアは目を閉じて少し寝ていた。
< 215 / 301 >

この作品をシェア

pagetop