半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
リリアは、サイラスと場所を移動して、小さな野花が咲く屋敷裏に腰を下ろした。
ここからなら、屋敷の中にいる使用人達からも見えるからだった。貴族のマナーでは、結婚前の男女が二人きりになるのはあまりよろしくない。そして、仕事に行くのを渋った父の事情もある。
わざわざテーブル席などは設けなかった。
どうせ彼も望んでいないだろう。服装を見るに、また仕事の途中であるのを考えれば、この間と同じく長居はしないはずだ。
「すぐに帰るんでしょ?」
沈黙がなんだか落ち着かず、リリアから声をかけた。
「そんなに時間は取れないからな」
推測した通りの返事があった。学院に通い始めてもあまり言を交わす機会はないくらいに、彼が仕事や公務へと移動する忙しい姿は見掛けていた。
そう、とリリアは相槌を打って視線を前に戻す。
会話が途切れて、また沈黙が流れた。
「なぁ。その……なんだ」
ややぎこちなく切り出したサイラスが、言葉に詰まって小さく咳払いする。
ここからなら、屋敷の中にいる使用人達からも見えるからだった。貴族のマナーでは、結婚前の男女が二人きりになるのはあまりよろしくない。そして、仕事に行くのを渋った父の事情もある。
わざわざテーブル席などは設けなかった。
どうせ彼も望んでいないだろう。服装を見るに、また仕事の途中であるのを考えれば、この間と同じく長居はしないはずだ。
「すぐに帰るんでしょ?」
沈黙がなんだか落ち着かず、リリアから声をかけた。
「そんなに時間は取れないからな」
推測した通りの返事があった。学院に通い始めてもあまり言を交わす機会はないくらいに、彼が仕事や公務へと移動する忙しい姿は見掛けていた。
そう、とリリアは相槌を打って視線を前に戻す。
会話が途切れて、また沈黙が流れた。
「なぁ。その……なんだ」
ややぎこちなく切り出したサイラスが、言葉に詰まって小さく咳払いする。