半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 いつもと違って、サイラスの行動がいまいちつかめない。緊張を感じているのは負けた気がして、リリアは『用件があるんなら言えやコノヤロー!』と弱った目で威嚇した。

 サイラスが、ここにきてリリアへ視線を返した。

「そう、か」

 またしても、彼がらしくない下手な咳払いを挟む。

「なんで学院に来なかったんだ?」

 先程と同じ質問をされて、リリアはチラリと睨み付けた。言葉を察したのか、調子が戻り出したように彼が先に言葉を続けてきた。

「コンラッドから話は聞いた。アグスティーナ嬢達と接触したあと、放電騒ぎがあったんだろう?」
「うっ……それは、別に私のコントロール不足じゃなくて」

 咄嗟に、バカにされるかもという思いが過ぎった。しかしリリアは、言い訳しかけて、すぐ自分の非を認めた。

「あの子は、別に悪くないわよ。……私が、強い放電期が終わったばかりで、妖力をきちんと制御できなかっただけ。そうしたら、誰かがコンラッド様を連れてきてくれたの」

 ふいとサイラスから視線をそらすと、スカートごと足を抱き寄せて、ぼそぼそと答えた。
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