半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「そういうことじゃないんだが」

 そうぽつりと口にした彼が、一度、思案気に宙を見る。

「もし、ここに他の令息が来たとしたら、お前はここに座らせるか?」
「はぁ? なわけないでしょ、即刻で追い返すわ」

 リリアは、キパッと答えた。

 コンラッドみたいなタイプは稀だろう。人間の貴族は、あやかし嫌いが圧倒的に多い。それにリリアとしても、人間の赤の他人を隣に座らせるとか絶対に嫌である。

「そうか」

 流れていった風につられたようにして、サイラスがそちらへ目を向けてから、独り言のように呟いた。

 なんだか、機嫌が少し戻った、みたいな……?

 気のせいか、訪問からずっとサイラスが元気がないというか、考え込んでいるみたいにも思っていた。とくに、父に謝罪した時そう感じた。

 でも、気のせいだったみたいに、彼の肩から力が抜けたのを感じた。

 そもそもサイラスとこうして座っているなんて、変な感じだ。

 リリアは、ふと気付いて落ち着かなくなった。足を伸ばし、スカートのしわを手で払い、ぽふぽふとやって気をそらす。

「なぁ」
「何よ」

 横顔を、サイラスが覗き込んでくる気配がした。リリアはつい、ぶっきらぼうな声を出して応える。
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