半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 でも、考えてもどっちか分からない。普通に話せるようになったのは、リリアがコンラッドを、もう小説のヒーローと同じだと重ねなくなったからだ。

 学院の一角を歩いていたリリアは、本を抱えたままふわりと浮かんだ。

 ここからだと、飛んで授業本館の建物を飛び越え、反対側にある敷地内の図書館へ寄った方が近い。

 次に入っている最後の講義まで、時間があるので次の本でも選ぼうかしら。

 そんなことを考えながら飛んでいた。上から、ふと図書館の前で、何やら言い合っている令息達の姿が目に留まった。

「何かしら?」

 リリアはふわふわと寄って行きながら、つい声をかける。

「ごめんください、どうかしたんですか?」
「うわっ――あ、なんだ殿下のご婚約者様の……」

 振り返った少年が、もごもごと確認の言葉を口の中に落とす。相手の眼鏡をかけた小柄な少年も、目をパチパチとしてリリアを見ていた。

「近くで見てみると、ほんとに空を飛んでいる……」
「飛べるわよ。それがなんなの」

 眼鏡の彼もまた、年下の学年であるようだ。バッジを見て判断したリリアは、ふわりと降り立ちながら怪訝そうにチラリと顔を顰める。

 いや、普通は浮遊できない。

 図書館を出入りして居合わせた数人の生徒達が、同じことを言いたいような表情をした。
< 235 / 301 >

この作品をシェア

pagetop