半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「殿下とは『喧嘩するほど仲がいい』というのは聞いてますよ。お休みされたら、あのお忙しい中で時間を見付けてお見舞いに行かれた。しかも、それが二回もあったとか」
「あっ、やっぱりの前のも、『お見舞い』になっているのね!?」
「はぁ。だって、『お見舞い』でしょう?」

 何を言っているんだろう、と彼が見つめ返してくる。眼鏡の少年もきょとんと見てきて、リリアは「うぐっ」と言葉を詰まらせた。

 あれは体調不良でもない。なんとなく休んでしまったことだ。

 でもやっぱり、サイラスは『見舞いに行った』だなんて言いふらしていたようだ。推測されたことが、とっくに現実になっていた。くそぅっ、とリリアは悔しがる。

「いや、あの、だから婚約中の御身の心配はない、とお伝えしたかったんですけど……」

 気遣いが空振りしたらしいと察したのか、背の高い彼が言いながらぽりぽりと大人びた顔をかく。

「先輩、聞こえてます?」
「何が?」

 一瞬、本気で分からなくてリリアはきょとんとする。
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