半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
多忙ゆえ、なかなか顔を合わせる機会がない相手だ。そいつが出るからこそ参加するんだよ、とサイラスは苛々しながら思ってもいた。
ピリッとした空気を感じたのだろう。公務同行のための支度を整えていたコンラッドが、サイラスへ目を向けて、個人的な思いから溜息をもらした。
「それにしても、まだ観念できないんですか? 先日も、慌てて屋敷の方へご訪問されていたでしょう」
「……分かってる」
コンラッドが言っているのは、ずっと以前からと同じく『素直になれ』ということだ。
ぐぅと呻き、サイラスは一度言葉を詰まらせた。
ふんっと顔をそむけてみるが、一番信頼しているコンラッドの視線がいたたまれない。気づけば彼は、ぼそりと小さく打ち明けていた。
「普通に話せたら話せたで、それだけで胸がいっぱいになったんだよ」
どれだけ彼女が特別なのか、身にしみて実感した一件だった。
これまでリリアは、落ち着いて話してくれたことなんてなかった。会えば毛を逆立てた猫みたいに、威嚇という喧嘩の第一声を放ってくる。
でも、それは自分のせいだとは分かっている。
初めて会った見合いの日に敵認定されて以来、徹底して睨まれ警戒されていた。
――だというのに、だ。
ピリッとした空気を感じたのだろう。公務同行のための支度を整えていたコンラッドが、サイラスへ目を向けて、個人的な思いから溜息をもらした。
「それにしても、まだ観念できないんですか? 先日も、慌てて屋敷の方へご訪問されていたでしょう」
「……分かってる」
コンラッドが言っているのは、ずっと以前からと同じく『素直になれ』ということだ。
ぐぅと呻き、サイラスは一度言葉を詰まらせた。
ふんっと顔をそむけてみるが、一番信頼しているコンラッドの視線がいたたまれない。気づけば彼は、ぼそりと小さく打ち明けていた。
「普通に話せたら話せたで、それだけで胸がいっぱいになったんだよ」
どれだけ彼女が特別なのか、身にしみて実感した一件だった。
これまでリリアは、落ち着いて話してくれたことなんてなかった。会えば毛を逆立てた猫みたいに、威嚇という喧嘩の第一声を放ってくる。
でも、それは自分のせいだとは分かっている。
初めて会った見合いの日に敵認定されて以来、徹底して睨まれ警戒されていた。
――だというのに、だ。