半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 焦りもあって、プライドも何もなかった。こちらの方が丸くなって接してみたら、まるでもう許しているみたいに、リリアはあっさり普通に話してくれたのだ。

 遠目からは見ていたが、睨んでいない顔を自分に向けられたのは初めてで。……じーっと近くから見てくる大きな金色の目が、意外と素直全開で余計に可愛い。

 そう思い返していると、自然とゆっくり頬が熱くなってきてしまった。

 サイラスがぐいっと腕で隠すと、コンラッドが心底同情します、というような表情を浮かべてくる。

「殿下、なんか可哀そうですね……これまで素直になれなかった反動ですか」
「言うな」

 ここでサイラスにずけずけ言えるのは、コンラッドくらいなものだ。ただ最近は、妙な形で巻き込まれたこともあって、言う度合いにより遠慮がなくなってきた。

 それと似たようなことになっている男が、もう一人。

 そちらに関しては反感しかなくて、サイラスは思い出すと、ぶすっと頬杖をついてしまう。

「あの狐め。最近分かっていて面白がってるのも、苛々する」
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