半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 いや、ただ単に、サイラスと婚約したいから、なのかもしれない。

 アグスティーナは、そこまで彼を慕っているのだろうか。幼少から噂になって期待していたところで、半妖令嬢の自分が登場して、プライドを傷付けられた?

 ――くだらない。

 そんな個人的な事情で、リリアはつっかかれていただけなのか。

 そう考えると、途端にバカバカしく思えてきてしまった。つまり自分は、彼女の個人的な都合やら我儘で、一方的な嫌なことを言われているのか。

 父のこともあって、カァッと頭に血が昇りかけた時だった。

「こうして殿下がお忙しくしていらっしゃるのも、あなたのせいでしょう」
「え……?」
「本来、ご婚約された時から、あのお方を支え、負担を軽減してあげる必要があったのではないのかしら? それなのに、しなかったがために、このざまです」

 強い非難を込めて、アグスティーナが『このざま』と吐き捨てた。

 私のせいで、サイラスは忙しい……?

 一体彼女は、何を言っているのだろう。リリアが茫然として見つめ返してしまうと、アグスティーナが美しい口元を歪めるようにして、くすりと笑った。
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