半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 プツリ、と、何かが自分の中で切れる音を聞いた。

 それは、これまで我慢していたあらゆること。そして、今日に至るまで受けていた扱いに対して、とうとうリリアのプライドが切れる音でもあった。

 ――迷惑なら、はっきり言ってくれれば良かったじゃない。

 ぎり、とリリアは拳を作った。

 リリアは、ずっと迷惑していた。何かしらにつけ『第二王子の婚約者』と指を向けられ、そのせいで、いよいよ半妖令嬢としても注目の的に立てられてしまった。

 ――でも、それは、サイラスの方も同じだったんだ。

 これ以上、何も聞きたくない。

 もうよく分かった。リリアは、黙らせるようにアグスティーナを睨み付けた。威圧を受けた彼女が、後ろ令嬢達と揃って、ビクリとして黙り込む。

「『そこまでして結婚したい』ですって? ハッ、笑わせないで」

 リリアは、毅然とした態度で、胸に手を当てて述べた。

「この私を誰だと思っているの。大妖怪にして、美しく高貴な天狐の母様から産まれた『リリア・レイド』よ。私の伴侶については、私にも選ぶ権利があるわ」

 リリアは傲慢とも思える口調で、令嬢達にそう言い放った。
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