半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「人間共を説得するには、いいタイミングにもなったわけか」
そう呟いたタヌマヌシに、黒狐姿でふわりと寄ったアサギが相槌を打つ。
「それは同感です。ところで、あなたが騒いだおかげで〝オウカ姫のお気に入りの〟森の木々の葉が、少し散ってしまいました」
「うっ、そ、それはすまんかった。きちんと戻そう。専門の大妖怪が知り合いにいる」
「それは良かったです。では、旦那様にもそうお伝えしておきますので、ひとまずはお帰りを。ついでに、あの転移魔法が働き続けて身動きが取れないでいる〝人間共〟を、魔法をひっくり返して、元の位置に戻してきてください。化け大狸のあなた様なら、できますでしょう」
人間の魔法を、ひっくり返しもする〝化かし〟の術の持ち主。
アサギから、捕食者の視線でじっと見据えられたタヌマヌシが、たじろいで一歩下がった。
「ここの執事狐は、なんかしっかりしすぎて怖いな……」
うちとは大違いだと、タヌマヌシはぼやいた。
その一方、空の上では、リリアがサイラスに手を握られたままでいた。
リリアは、手を包む高い体温にじわじわと赤面し出していた。
十二歳の時、とうとう握手さえ交わさなかった。社交で居合わせても同じだったのに、今、彼と、触れている。
巨大な転移魔法は稼働中で、浮遊魔法を展開していもいる。
それなのに、魔力酔いなんて感じない。
そう呟いたタヌマヌシに、黒狐姿でふわりと寄ったアサギが相槌を打つ。
「それは同感です。ところで、あなたが騒いだおかげで〝オウカ姫のお気に入りの〟森の木々の葉が、少し散ってしまいました」
「うっ、そ、それはすまんかった。きちんと戻そう。専門の大妖怪が知り合いにいる」
「それは良かったです。では、旦那様にもそうお伝えしておきますので、ひとまずはお帰りを。ついでに、あの転移魔法が働き続けて身動きが取れないでいる〝人間共〟を、魔法をひっくり返して、元の位置に戻してきてください。化け大狸のあなた様なら、できますでしょう」
人間の魔法を、ひっくり返しもする〝化かし〟の術の持ち主。
アサギから、捕食者の視線でじっと見据えられたタヌマヌシが、たじろいで一歩下がった。
「ここの執事狐は、なんかしっかりしすぎて怖いな……」
うちとは大違いだと、タヌマヌシはぼやいた。
その一方、空の上では、リリアがサイラスに手を握られたままでいた。
リリアは、手を包む高い体温にじわじわと赤面し出していた。
十二歳の時、とうとう握手さえ交わさなかった。社交で居合わせても同じだったのに、今、彼と、触れている。
巨大な転移魔法は稼働中で、浮遊魔法を展開していもいる。
それなのに、魔力酔いなんて感じない。