半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 気付いたサイラスが、心配そうにそっとリリアの顔を覗き込む。

「悲しかったのか?」
「……あれで、全部終わるんだなと思ったら、胸がきゅっとしたの」
「終わらせない。悪かった、その話はもうしなくていい」

 不意に、サイラスに手を取られた。

 気遣わしげな仕草だった。リリアが目を向けると、そこには本当に心配している様子の彼の顔があった。

「俺は、婚約を迷惑に思っていない」

 理解させるように聞き取りやすく、そう言われた。

 ゆっくり思い返してみると、先程全く落ち着いてくれなかった彼が、それほどまでに破棄されまいと必死になっていたのに気付く。

「私との婚約を、破棄したくなかったの……?」

 互いに利害が一致して、仕方なく結んだ契約的な婚約だったのに?

 そう思っていると、きゅっと手を握られた。

「婚約を続けたかったから、説得や根回しにも駆け回っていたんだ」

 そんなこと、知らない。

 リリアは、じわじわと顔が熱くなるのを感じた。
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