半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 近くから、サイラスの目が熱くリリアを見据えた。
 
「リリア」

 名前を呼ばれただけで、リリアは胸が高鳴って体温も上がった。そのまま近くから見つめ合っていると、またサイラスの顔が近づいてくる。

 リリアは、自然と目を閉じた。

 再び唇が重なると、先程よりも少しだけ深く口付けられた。

「……んっ……ん」

 彼のキスは、うっとりとするくらいに甘くて、優しくて、まるで想像していた『騎士様』みたいに、抱き寄せる手の仕草一つまでロマンチックさを伝えてきた。

 気付けばリリアは身をゆだね、二度、三度、彼が唇を重ね直すのも許していた。

 短いキスが終わる。ふっと口付けをやめたサイラスが、すぐそこからほぅっと見つめ返すリリアを見て、我に返ったみたいに頬を少し染めた。

「好きだよ、リリア。どうか嫁いできて欲しい」

 そっと解放されたリリアは、実感が遅れて込み上げてきて唇を指先で押さえた。そんなことを言われたら、もう意識せずにはいられない。
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