半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 それから、ツヴァイツァーとアサギによって、慎重に手紙の返事を考え書かれていった。

 これで断ってくれればいい、という望みを託して、便箋の裏、という相手方への嫌いさが分かるアサギの対応で、簡単にリリアの姿絵も描き添えられた。

「……なんか、全然可愛くないわ」
「姫様、我慢してください。俺だって心苦しいんです」

 そう言いながらも、アサギは「よーし、断らせてやりますわ」とノリノリだった。
 
 むっつりと目も細く、耳も威嚇した動物みたいに強調して描かれた。これで見合いの席を設けたいという知らせが、引き続きあるとしたのなら、あからさまに政治的なものだろう、と。

「まっ、俺の予想では、八割方以上の確率で諦めてくれないでしようね。形だけでも婚約を取りつければ、国内外への印象は悪くない。印象だけに狙いがあるとしたら、解消することが前提の婚約話をしてくる可能性もあります」
「その場合、結婚は本当に二の次ってことになるんじゃない?」

 リリアは、手紙を封筒に詰めていく手元から、アサギへと不思議そうな目を向けた。
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