半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「くしゅっ」

 その瞬間、彼女の上を走り出していた電流が、バリリッと毛を逆立て強く弾け飛んだ。

 ツヴァイツァーの元へ飛んだ横走りの雷撃に、黒狐のアサギが赤黒い火を放つ。

 高温度に圧縮された炎の弾が、雷撃の威力を相殺した。それは強い風を起こして、双方の妖力が消える。

「く、くしゃみ一つで放電とか、マジ勘弁してくださいよ姫様!」

 全身の美しい毛並みを、ぶわりと立ててアサギが言った。しかし、慣れっこのツヴァイツァーは、はははと呑気に笑う。

「今日も、うちの娘は元気だなぁ。そういうとこ、オウカにそっくりだよ」
「旦那様、はっきり言いますが、オウカ様の放電もシャレになりません。恋人だった頃、森の木々を数本吹き飛ばしたのをお忘れですか」

 喋る狐と化したアサギが、おいコラてめぇ何言ってんだと、器用にも獣の前足でツヴァイツァーの胸倉を掴んで言い聞かせる。

「ごめんなさい」

 リリアは申し訳なくなって、鼻を啜りながら二人へ素直に謝った。
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