半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 あやかし嫌いではないのはいいのだけれど、これはこれでどうなのか。

 うーんと首を捻ったアサギが、オッホン!と咳払いをして、彼らの集中力を今一度引き締めさせた。

「これくらいの仔狐だと、日中は寝るのが仕事みたいなものです。妖力は月光浴でより身体に馴染んで、落ち着きやすくもなりますから、そろそろ夜の空中散歩を教える頃合いですかね」
「早い時間であれば、我々としては安心なのですが」
「夜の散歩といっても、お嬢様はまだ十二歳ですし……」

 男性使用人が述べると、屋敷の警備達も心配そうにリリアを見やった。

 夜の空中散歩、と繰り返したツヴァイツァーが、そこで羨ましそうにアサギへ言う。

「俺が父親なのに、仲間外れになるのは寂しいんだけど」
「そう言ってくると思ってました。まずは近くを少し散歩する予定ですし、デビューは屋敷の庭園から見える範囲内にしますよ。早い時間であれば、旦那様は外の席でティータイムでもしながら、姫様の成長ぶりを眺められるでしょう?」
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