半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
詳細を知った大人達の口によって、噂はますます領地内に広がった。
同じく夜の本格的な飛行デビューを見届けたいと、領主であるツヴァイツァーの元に続々と意見書が届いた。
そこで、コースの中に、村の上空も含められることになった。
――のだけれど、まさかのお祭り騒ぎのような大事になって、アサギが恥じらった。
「みんなが見ている中、狐姿を見られるとか、なんか今更のように恥ずかしくなってきた……」
これまでずっと、外では『人姿』で過ごしていたせいだろうか。
これまで注目されることもなかったアサギが、リリアに涙声で訊く。
「姫様も狐の姿になりませんか?」
「イヤ」
彼女は、伯爵家執事のお願いを、即座に断った。
そして夜中散歩の当日、夕方。
リリアが夕食を取っている間、いったんシャワーで頭を冷やしてきたアサギが、変身術を解いて丹念に毛並みのブラッシングを始めた。
どうやら、彼は多くの人に見られる緊張を、身繕いをして紛らわせることにしたらしい。妖力でふわふわと浮くブラシの動きを、リリアはついつい見てしまっていた。
「俺、妖狐としての自信を取り戻せば、気にせずいけると思えました!」
「その自信って、毛艶なの?」
もぐもぐ食事しながら、リリアは小首を傾げる。一緒に夕食をとっているツヴァイツァーも、同じく首を捻っていた。
同じく夜の本格的な飛行デビューを見届けたいと、領主であるツヴァイツァーの元に続々と意見書が届いた。
そこで、コースの中に、村の上空も含められることになった。
――のだけれど、まさかのお祭り騒ぎのような大事になって、アサギが恥じらった。
「みんなが見ている中、狐姿を見られるとか、なんか今更のように恥ずかしくなってきた……」
これまでずっと、外では『人姿』で過ごしていたせいだろうか。
これまで注目されることもなかったアサギが、リリアに涙声で訊く。
「姫様も狐の姿になりませんか?」
「イヤ」
彼女は、伯爵家執事のお願いを、即座に断った。
そして夜中散歩の当日、夕方。
リリアが夕食を取っている間、いったんシャワーで頭を冷やしてきたアサギが、変身術を解いて丹念に毛並みのブラッシングを始めた。
どうやら、彼は多くの人に見られる緊張を、身繕いをして紛らわせることにしたらしい。妖力でふわふわと浮くブラシの動きを、リリアはついつい見てしまっていた。
「俺、妖狐としての自信を取り戻せば、気にせずいけると思えました!」
「その自信って、毛艶なの?」
もぐもぐ食事しながら、リリアは小首を傾げる。一緒に夕食をとっているツヴァイツァーも、同じく首を捻っていた。