半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 勢いに気圧されたアサギは、結局はメイド達に代わる代わるブラッシングをされることなった。リリアが同情の目を向けているそばで、ツヴァイツァーが肩を震わせて無言で笑っていた。

「姫様、ブラッシングはいかがされますか?」

 ブラッシング後、黒狐姿のアサギが凛々しい面持ちで言った。

 他人にされるブラッシングは、思いのほか気持ち良かったらしい。恥ずかしいので本当に時折だったらいいかも、と、彼の妖狐の目は雄弁に語っていた。

 リリアは、デザートを食べ進めながら、横目でジロリと彼を見やった。

「私は、狐の姿では飛ばないったら」

 リリアは、つーんっとそっぽを向いた。……短い足、ぽてっとしたミニマム感ある体。それなのにもっこもこの尻尾。いかにも子供っぽくて恥ずかしくもあった。


 そして、夜も早い時間、支度を整えて庭先へと出た。
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