半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「どうです、姫様。これが、俺たちの見ている世界ですよ」
アサギが、ようやくいったん止まってそう言った。
夏の気配を運んできている夜風が、肌を打って最高に気持ちいい。リリアは獣耳をぷるぷるさせると、随分高いところまできた実感をかみしめて全身で応える。
「キレイねぇ! すっごく爽快感があるわ!」
興奮するまま彼の周りを、くるっと飛んだ。それを黒狐の姿でニヨニヨと眺めているアサギは、とても満足そうだった。
「そうでしょう、そうでしょうとも。妖怪国はもっと綺麗ですよ。人間界では姿消しの魔法を使う小さなあやかしも、妖怪国の夜では、互いを照らし合うために発光していますからね」
「でも行かないわよ。父様がいるから」
リリアは、キパッとそう答えた。
下に広がる光景を眺めるその横顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。十二歳になった幼い彼女の眼差しは、同じ年頃の少女より随分大人びる。
リリアは知っているのだ。
母が、リリアを父のもとに残した理由を。
アサギが、ようやくいったん止まってそう言った。
夏の気配を運んできている夜風が、肌を打って最高に気持ちいい。リリアは獣耳をぷるぷるさせると、随分高いところまできた実感をかみしめて全身で応える。
「キレイねぇ! すっごく爽快感があるわ!」
興奮するまま彼の周りを、くるっと飛んだ。それを黒狐の姿でニヨニヨと眺めているアサギは、とても満足そうだった。
「そうでしょう、そうでしょうとも。妖怪国はもっと綺麗ですよ。人間界では姿消しの魔法を使う小さなあやかしも、妖怪国の夜では、互いを照らし合うために発光していますからね」
「でも行かないわよ。父様がいるから」
リリアは、キパッとそう答えた。
下に広がる光景を眺めるその横顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。十二歳になった幼い彼女の眼差しは、同じ年頃の少女より随分大人びる。
リリアは知っているのだ。
母が、リリアを父のもとに残した理由を。