半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
妖怪国は、人間界と時間の流れが少し違っている。
どのくらい違っているのか、リリアは体感したことがない。でも、ちょっとの間に一晩、二晩と、一人で過ごす父を思えば、実行してみることなどできなかった。
――リリアにとって、父が、ここに居る理由の全てだ。
たとえ、領地の外で、ひどく自分を嫌っている人間たちがいたとしても。
だからこそ、たった数十年しか一緒にいられない父のいる世界から、リリアは逃げたくないのだ。
「――知ってますよ。そんなの、知っています」
向こうから、いつもより優しいアサギの声が聞こえた。
「ただ、緊急避難の必要があった時には、問答無用で妖怪国に隠させて頂きますからね」
場の空気を戻すように冗談を言われる。
昔からアサギは、リリアのことを一番よく知っていた。いつだって、一番に考えて大切にしてくれている。
リリアは、思わず苦笑交じりに「ふふっ」と声をもらした。
「そんなこと起こらない。母様に、父様のことを頼まれたの。私が、そんなことさせない」
「我々だってそのつもりです。――さて」
そこでアサギが、声の調子を戻して明るく言う。
「ここだと、領地の境にある森の上空が一番の絶景ポイントなのですが、旦那様達が心配してしまいますので、もう少し慣れてからにしましょう。まずは妖狐としての飛行を練習です。俺にしっかりついてきてくださいね」
どのくらい違っているのか、リリアは体感したことがない。でも、ちょっとの間に一晩、二晩と、一人で過ごす父を思えば、実行してみることなどできなかった。
――リリアにとって、父が、ここに居る理由の全てだ。
たとえ、領地の外で、ひどく自分を嫌っている人間たちがいたとしても。
だからこそ、たった数十年しか一緒にいられない父のいる世界から、リリアは逃げたくないのだ。
「――知ってますよ。そんなの、知っています」
向こうから、いつもより優しいアサギの声が聞こえた。
「ただ、緊急避難の必要があった時には、問答無用で妖怪国に隠させて頂きますからね」
場の空気を戻すように冗談を言われる。
昔からアサギは、リリアのことを一番よく知っていた。いつだって、一番に考えて大切にしてくれている。
リリアは、思わず苦笑交じりに「ふふっ」と声をもらした。
「そんなこと起こらない。母様に、父様のことを頼まれたの。私が、そんなことさせない」
「我々だってそのつもりです。――さて」
そこでアサギが、声の調子を戻して明るく言う。
「ここだと、領地の境にある森の上空が一番の絶景ポイントなのですが、旦那様達が心配してしまいますので、もう少し慣れてからにしましょう。まずは妖狐としての飛行を練習です。俺にしっかりついてきてくださいね」