半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
何枚もの美しい布地を重ね着けるようなその衣装は、イルエマニエ王国では見たこともないものだった。
登場した途端、誰もが彼女の人外的な美しさに釘付けになった。そして、今にも呑み込まれそうな強大な妖力は、立ち合った魔法使いの動きをたった一瞥だけで圧してしまった。
「我は妖怪王の三十七番目の娘、天狐の姫オウカ。このたび、ツブァイツァー・レイドの妻となったゆえ挨拶に参った。我は神位を頂いた大妖怪、人界には長くとどまれぬ」
彼女は、ニコリともせず淡々と語った。
――が、その隣で。
まるで妖力による威圧さえも微塵に気付いていない様子で、若きレイド伯爵が、少女のようにてれてれと頬を染めて立つ姿があった。
「陛下。彼女が、俺の妻オウカです。夫である俺が、先に挨拶すべきだったのに申し訳ございません。ふふっ、オウカの夫ですって言えるのが本当に嬉しくって、すみませんニヤけてしまいます」
……この男は、もしかしたら色々と恐ろしく鈍感なのかもしれない。
国王と、そこにいた全員が別の意味で彼の方にも慄かされた。
空気が読めないタイプなのかもしれないが、ひとまず一人だけ幸せたっぷりな感じの気配を漂わせるのやめろ、場違いだぞと、みんな思ってはいた。
登場した途端、誰もが彼女の人外的な美しさに釘付けになった。そして、今にも呑み込まれそうな強大な妖力は、立ち合った魔法使いの動きをたった一瞥だけで圧してしまった。
「我は妖怪王の三十七番目の娘、天狐の姫オウカ。このたび、ツブァイツァー・レイドの妻となったゆえ挨拶に参った。我は神位を頂いた大妖怪、人界には長くとどまれぬ」
彼女は、ニコリともせず淡々と語った。
――が、その隣で。
まるで妖力による威圧さえも微塵に気付いていない様子で、若きレイド伯爵が、少女のようにてれてれと頬を染めて立つ姿があった。
「陛下。彼女が、俺の妻オウカです。夫である俺が、先に挨拶すべきだったのに申し訳ございません。ふふっ、オウカの夫ですって言えるのが本当に嬉しくって、すみませんニヤけてしまいます」
……この男は、もしかしたら色々と恐ろしく鈍感なのかもしれない。
国王と、そこにいた全員が別の意味で彼の方にも慄かされた。
空気が読めないタイプなのかもしれないが、ひとまず一人だけ幸せたっぷりな感じの気配を漂わせるのやめろ、場違いだぞと、みんな思ってはいた。