半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「俺が幼い頃も、何度か近くまで来ることはあったが、露骨に『訪問』ってのはなかったな。大昔の妖怪王との約束事が、結構効いていたみたいだからなぁ」

 ツヴァイツァーが、悩み込んだ顔で思い出すように言った。

 王族が、レイド伯爵領に足を踏み入れるのは、今世代で初めてのことだ。王宮からの代表で宰相も同行するというので、恐らくは現地の視察も兼ねているのだろう。

 外から来る商人から集めた噂だと、第二王子はリリアと同じ十二歳。最年少で魔法訓練所も卒業した、優秀な魔法使いとして知られている。

 貴族の子供達が通う貴族学校在学中でありながら、既に国一番、と言われているくらいなのだとか。

 国でただ一人与えられる『最強の魔法使い』の称号も、ゆくゆく魔法戦士長から彼に継承されるのでは、とも噂されている。

 だが賢王子と言われ、将来の国王としての信頼を集めている上の兄とは違い、攻撃的な性格だという気になる情報も入っていた。

 その時、リリアは、ハッと難しい顔をしている父に気付いた。

「これ、父様の立場としては、断れそうにないんでしょ」

 胸がきゅっと締め付けられて、咄嗟に強がった声を出していた。
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