半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 そこには、黒狐の姿をしたアサギがいた。彼は、隣にふわふわときた彼女を一度見て、狐の顔で「ん?」と首を捻る。

「姫様、リボンまでされてないじゃないですか」
「これから自分でするの。それよりも、これってもしかして人間の魔法? 耳がピリッとする違和感があったわ」

 リリアは、胸元のリボンの紐をしめつつ尋ねた。

 アサギが「はい」と答えて、再び顔を前へと戻した。ずっと遠く、森の向こうを眺めつつ口を開く。

「莫大な魔力量ですねぇ。王宮の魔法使い達も、殿下を中心とした魔法展開に対して、実にいい働きをされている。――しかし」

 そこでアサギが、口をニィッとして、グルグルと獣の喉を鳴らした。

「それでもレイド伯爵領にかけられている、我らの結界までは破れなかったようで。手前の着地になったみたいですね。あー、愉快、愉快」
「結界なんて張ってあるの?」
「ありますよ。戦乱の時代に、馬鹿な魔法国家の人間共の一部が、当時の伯爵に手を出そうとしたとかで、かなり強力なものに貼り直されたそうです。黒狐と白狐の合同結界ですから、オウカ姫ほどの大物級でないと、破れないと思います」
< 53 / 301 >

この作品をシェア

pagetop