半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 社交界へ出席する時、彼女のそばには必ずアサギが付いていた。

 リリアが一度も婚約者にエスコートされず、常に執事を連れていたのも、社交界で第二王子との不仲説の原因に一役買った。

 ずっとそばにいられないツヴァイツァーの代わりに、教育係のアサギが面倒をみる。そして時には、必要になった際の臨時エスコート役も引き受けた。

 ――レイド伯爵家の執事は、あやかしである。

 見合いの一件で知られたことで、獣耳付きのリリアとセットになったその姿を、多くの人がチラ見した。

 どうせ、ただいるだけでも見られてしまうのだ。

 リリアは、自分の将来のために勉強に励み、売られた喧嘩は全部買って言い負かした。一年も経つ頃には、ツヴァイツァーが心配に思わないほどたくましい令嬢になっていた。


 しかしその翌年、十五歳になって事情は変わってくる。

 リリアは、婚約者という立場が、どれほど面倒臭いのか悩まされることになった。
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