半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 アサギは、何人目かの給仕に「ドリンクは不要です」と仕草で伝えると、投げ出している腕を少し持ち上げてリリアに言った。

「でも、しょうがないじゃないですか。いちおう姫様は書面上、彼とは婚約者同士ってことになっているんですから」

 確かにそうだ。

 しかし、リリアには、その事実とは別で思うところがあるのである。

「顔を合わせるたびに文句を言い合っているのに、『殿下に媚びを売るなんて卑しい』ってなんなの? 私があんなやつに頭下げて媚を売るかーっ」
「あ、そっちでお怒りなんですね? ははっ、さすがプライドがお高い」

 今や、獣耳については、胸を張って「人間ではないですし」と答えた。人間にはない力についても「そんなに気になるのなら、今すぐお試しになられます?」と軽く威嚇もできる。

 ――だが、婚約の云々については、ダメだ。

 第二王子サイラスと婚約をしている自分が、将来の結婚のため時には尻尾を振っている(?)という言い方をされるのが、本気でダメだった。

 どうもプライドの高い妖狐の姫として、腹が煮えくり返るくらい許せないのである。
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