半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「あいつの瞳の色っぽいドレスって聞こえたのが、もう入場してすぐから嫌だった。いちいちそんなこと考えて、着る? 気に入ったドレスがこれだったのッ」
「うんうん、知ってますよ。俺もうっかり忘れてました。旦那様の目の色に、合わせたつもりだったんですけどねぇ」
「あーもーッ、歯がうずうずするし余計苛々する!」
「ははは、仔狐の歯が最後の成長時期ですから、仕方ありません。落ち着けば苛々も減ると思いますし、ひとまず肉料理でも齧っておきましょう」

 アサギが、よいしょと立ち上がって、手ごろなキチンを二本手に取った。

 そのうちの一本を寄越されたリリアは、それを忌々しげに噛み千切って咀嚼した。味がよく分からない。屋敷の料理長達が作ってくれるものの方が、美味しい。

「あ、姫様見てください。令嬢達と、それに囲まれる〝人間の第二王子〟です」
「別に見たくない」
「ははははは、彼を頭からバリバリ食べているのを想像したら、この肉料理も美味しく感じられると思うんですよ」
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