半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 あのお見合いの一件以来、アサギは人外という差別用語のお返しのように、サイラスのことを『人族の第二王子』と嫌味っぽく呼んでいた。

 アサギが目を向けたので、つられたようにリリアもそちらを見た。

 ダンスフロアから少し離れた位置で、立ち話をしているサイラスの姿があった。

 ここ数年で無駄に身長も伸び、美貌にも磨きがかかっていた。第一王子と違ってあまり愛想も振ふらないというのに、口角を引き上げる挑発的な笑みだけで令嬢達がきゃーきゃー騒ぐ。

「……あんなの、どこがいいのかしら」

 向こうにいる令嬢達は、学院でも見覚えのあるメンバーだった。ここ最近は、すっかりサイラスの取り巻きである。

 彼女達はサイラスと話しながら、向こうのダンス会場を、ちらちらと気にしている様子でもあった。ダンスの権限をめぐって、静かな奪い合いも水面下で勃発していそうだ。

「触れたら魔力酔いを起こすから、ダンスなんて無理なのにね」
「ははは、だからダンスフロアから離れているんでしょう」

 アサギは相槌を打ったが、興味はなさそうだ。
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