半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 アサギと共に会場を出てから、すぐそこの薔薇園へと下りた。

 夜の王宮の庭園は、月明かりを眩しく映す仕様で素晴らしい。日中はよく色映えし、夜は月光で存在を主張する種類の薔薇も、とても美しかった。

 ここは王宮で、リリアにとって唯一のお気に入りでもある。

 お目付役として、会場横の通路からの段差にアサギが腰を落ち着けた。そんな中、リリアは溜め込んでいた妖力を解放して浮遊した。

 今夜もドレスの下には、もちろんズボンを履いている。

 リリアは形ばかりにドレスの尻部分を手で押さえると、真上から眺められる薔薇庭園の綺麗さを堪能した。

「姫様にも、そろそろ侍従となるお供狐が必要ですかねぇ」

 薔薇園の上を、ふわふわと飛ぶリリアを眺めながら、ふとアサギが言った。

 リリアは、月明かりの下で美しい薄金色の長い髪と、ふわふわとした獣耳を動かしてきょとんと彼を見つめ返した。

「なんのために付けるのよ。護衛がいらないのは、アサギもよく知ってるじゃない」
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