半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
殺気や敵意がなかったとはいえ、この距離まで気付けなかったのにも驚いた。
リリアと同じくして、アサギも一体何者だろうかと反射的に振り返る。するとそこには、王族としての品溢れる正装に身を包んだサイラスがいた。
別の方向から庭園を歩き進んでいたのだろうか。彼は、設置されている薔薇のアーチをこえて向かってくる。
なるほど、戦闘魔法にも長けた彼なら、気配を完全に消すのもお手のものだろう。
そう考えると納得できた。しかし、リリアは向かってくる彼を見てちょっと警戒してしまった。
普段から愛想がない男だが、一体何があったのか。すっかり大人びて十五歳には見えないサイラスの美麗な顔には、露骨な不機嫌さが滲んでいた。
「……わざわざ婚約者が会いにきたのに、降りて来ないのは失礼じゃないか?」
やってきたサイラスが、ややあってそう言ってきた。
下に来た彼としばし見つめ合っていたリリアは、他に人の目もないと分かって「ふんっ」とそっぽを向いた。ドレスのスカート部分を押さえて、更に上へと浮いてもう少し距離を置く。
「私は〝人外〟の化け物なので、人間のルールとか知りません」
リリアと同じくして、アサギも一体何者だろうかと反射的に振り返る。するとそこには、王族としての品溢れる正装に身を包んだサイラスがいた。
別の方向から庭園を歩き進んでいたのだろうか。彼は、設置されている薔薇のアーチをこえて向かってくる。
なるほど、戦闘魔法にも長けた彼なら、気配を完全に消すのもお手のものだろう。
そう考えると納得できた。しかし、リリアは向かってくる彼を見てちょっと警戒してしまった。
普段から愛想がない男だが、一体何があったのか。すっかり大人びて十五歳には見えないサイラスの美麗な顔には、露骨な不機嫌さが滲んでいた。
「……わざわざ婚約者が会いにきたのに、降りて来ないのは失礼じゃないか?」
やってきたサイラスが、ややあってそう言ってきた。
下に来た彼としばし見つめ合っていたリリアは、他に人の目もないと分かって「ふんっ」とそっぽを向いた。ドレスのスカート部分を押さえて、更に上へと浮いてもう少し距離を置く。
「私は〝人外〟の化け物なので、人間のルールとか知りません」