半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 リリアは、開き直ってそう言った。

「見ても分かる通り、私は休憩中なの。たかがあなたの相手をしている暇はないのよ」

 相手にもならんわ、というような言い方をして、つんっとした態度で背中に流した薄金の髪を波打たせた。

 アサギが両手で頬杖をついてから、サイラスの存在を無視して言う。

「ずっと地上を歩いていましたから、姫様ストレスが溜まっていましたもんねぇ。飛びたい年頃の子狐ですからね、ははは」

 ぴくり、とサイラスが反応する。

「『姫様』……」

 口の中で小さく繰り返した彼が、聞き覚えがある様子でジロリとアサギを見やる。それに対してアサギは、もう知らんぷりだ。

 けれど、サイラスはすぐに夜空へと視線を戻した。そして背を向けているリリアへ声をかける。

「俺をナメるなよ。それくらいなら、人間の俺だって飛べる」

 ……ん? 人間なのに、〝飛ぶ〟?

 疑問を覚えた直後、リリアは魔力の流れを察知した。訝しげに振り返ってみた途端、彼女は大きな目を丸くする。

 すぐ目の前に、淡く輝く魔法陣を足元で光らせている彼が、いた。
< 99 / 301 >

この作品をシェア

pagetop