<続>双星の煌めきは月夜に魅せられて
薬物依存症の怖いところは一生元に戻らないところ。
いくら頑張ってやめたとしても、ふとした時に“薬物を使いたい”という欲求が蘇ってしまうのだ。
やめてから5年、10年の年月が過ぎたとしても、一度使ってしまえばまた以前の状態に戻ってしまう。
やめるのでなく“やめ続ける”努力と忍耐力がとても重要になる。
そして以前、胡桃が薬物を摂取したのは、決まって元組長の三村が喜んでお酒を飲んでいた時だったようだ。
胡桃にとってお酒は、クスリを摂取する感覚を思い出させるものなのだ。
こんなのいつ渇望してもおかしくないって言ってるのと同じだ。
「胡桃は自分を優先しな。私のことはいいから」
「……うん、ありがとう」
「こちらこそ。私のこと考えてくれてたんだよね。でもシャレになんないから、いくら胡桃に勧められても絶対に飲まないよ」
きっぱり言えば、胡桃は諦めたように笑いながらも嬉しそうだった。
「席変える? 周りの人達結構飲んでるよ」
「んー、いや、今は大丈夫だからいいかな。それに自分で頑張って抑えたい」
光希が気遣って声をかけてくれたが、胡桃は首を横に振った。
「そういえば、バイト始めるんだっけ」
「そう! 憧れのブランドで働けることになったの!」
胡桃はクスリをやめられたら、オシャレしたいっていつしか言ってたもんな。
だから朔夜から働くと聞いて、ふたりして喜んだんだ。
その後もなんとか胡桃の渇望を抑えることができ、私達は満足に食べてから光希のカフェを後にした。