<続>双星の煌めきは月夜に魅せられて
「仕方ないじゃない。手を怪我したのよ。撮影なんてできるわけないわ」
「骨折とか何かですか?」
「なんか知らないけど針で刺したとか? 手に絆創膏があったのよ」
針で刺した……?
お裁縫の一環か何かだろうか。
「ちなみに絆創膏っていくつ?」
「1個だから少ないとか甘いの。モデルなのに傷を作ることが問題なのよ。プロなんだからそんくらいしっかりしてもらわないと困るわ」
つまり1カ所ということなのかな……?
思っるより軽い怪我で安心したが、モデル業界の厳しさを目の当たりにした。
「その子は……?」
「私の指示で帰ってもらったわ」
一見暴君に見える彼女だが、言っていることは何も間違ってない。
プロ意識が高い故の発言だ。仕事だから妥協したくないのだろう。
「……まあ、冬デート特集だったら手袋で代用できたけど夏デートだからね」
ボソッと呟いた言葉はきちんと私に届いた。