きみのこと、極甘にいじめたい。
かといって、あたしはわかなが好きだから、お節介であろうとほっとけない。


そう思って、時間ぎりぎりに登校してくる理太をひと気のない場所でこっそりと待ち伏せている。


……見つけた。


眠たそうな顔で、音楽を聴きながら歩く理太。


こんな遠くからでも、目をひく存在感。


はー、なんだあれ……かっこい……。


全身隙だらけのその雰囲気さえ、めちゃくちゃ魅力的な風貌。


理太が昇降口で靴を履き替えるのを確認してから、少し歩いて


柱と掃除用具入れの間、ひと二人分くらいの隙間にはいりこみ、理太をまつ。



……通り過ぎようとする無防備な理太に向かってー……、



蛇が獲物を飲み込むように素早く手を伸ばす!


「わっ!」


理太のネクタイをとっ掴まえて、ぐいっと手前に引き寄せた。



真ん丸に見開かれるヘーゼルの瞳。映るあたしまで見えるような距離。



「危ね……っ」


短い声を出した理太は、バランスを崩して、あたしの上に倒れ込んできた。


押し倒されるようにあたしの重心が後ろへ傾き、やばいコケる!!と目を瞑った瞬間。


――ゴツ、という音がした。


けど痛くない。


とっさにあたしの頭をかばうように理太が守ってくれたからだ。


ひぇ、抱きしめ、られてる……!


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