きみのこと、極甘にいじめたい。
そうして訪れた放課後。


わかなと一緒に歩いていた、廊下のど真ん中。


「泉田さん、ちょっといい?」


泉田って……わかなの苗字だけど……。


振り返ってみれば、女子三人組が、敵意丸出しでこっちを睨んでいる。


……身に覚えのある視線だ。


サーっと全身の血が引いていく感覚。


ドクドクと跳ね上がる心臓。


だから言ったのに、わかな……。
これ、多分……理太のせいなんじゃ……。



息の吸い方を一瞬忘れたほどの動揺で、声がうまくでない。



そんなあたしの隣で、わかなは身に覚えがなさそうにきょとんと返した。


「何?」


「この前理太と二人で帰ってたけど、付き合ってんの?」


「えー?偶然会っただけだよ?」


「今日はお弁当一緒に食べてたでしょ。理太のこと狙ってんの?」


「んー、狙ってる、かなぁ?」


唇に指を当てて、首をかしげるわかな。


やばい、こういうときに、そういう仕草を許す女子は、この世界で少数派だ。


< 119 / 131 >

この作品をシェア

pagetop