きみのこと、極甘にいじめたい。
……どうしてこんなに胸が苦しいの。



「と、とにかく弁当作りとかあざといことすんなって言ってんの!」


「理太だって友達つくりしたい時期なんだから、独り占めすんな自己中女!」


「それとさ……別れ際にキスしてたって噂はどーなの? 本当なの?」


……き、キス?


まさか、わかな……?



「……さーどうでしょうねー?」


はぐらかした……え、キス、したの?



戸惑いと恐怖とで、頭がぐちゃぐちゃだ。



あたしの手はずっと小さく震えてるのに、わかなは全然平気みたいだ。


そっか。この人たちはわかなにとって見ず知らずの他人。


親友に責められたあたしとは、根本的に違うんだ。


助けてくれる人が誰もいなかったあたしとは……違う。


わかなとあたしの人望の違いを、自ら証明したみたいだ。


虚しすぎ……。


だから、こんなに胸が痛いのかもしれない。




視線を落としかけた時。


リノリウムの床を気だるそうに鳴らす足音が近づいてきた。





「……何この騒ぎ。どーしたの? 今……キスとか、俺の名前とか言ってなかった?」



< 122 / 131 >

この作品をシェア

pagetop