きみのこと、極甘にいじめたい。

いつの間にかギャラリーができていたらしい。


そこを分け入るように理太が入ってきた。


「え……、いや」と女子たちは焦って顔を見合わせている。


「なんか私が理太と一緒に帰ったりお弁当食べたのが気に入らないんだって。つまりヤキモチをぶつけられちゃって」


「……そう」


そう言った理太は、すっとあたしに視線を滑らせてきたから、さっと顔を背けた。


言い負かされて泣いてるなんて、かっこ悪い、恥ずかしい……。



「俺、気が変わったかも。好きでもない子を助ける気なんて無かったけど、」


肩にひっかけていたスクバを廊下の床に下ろしながら、誰にも気づかれないように、あたしの耳もとで囁いた小さな声。



「……素直が泣くなら、仕方ないよね」



優しく細まる目。


ふわり、あたしたちから遠ざかった彼は、


「途中からしか聞いてないけど。キスしてほしくて、妬いてんの?」


真ん中の女子の頬に触れた。


「え……!?」


真っ赤に染まっていくその子の頬。



「……いーよ。キスくらい、いくらでもしてあげる。俺、そういう人だから」



「え……え、嘘ぉ……?」


戸惑いながらも、抵抗しない、むしろキスを待つようなそぶりさえ伺える女子に、理太は。



顔色一つ変えずに、近づいて……


「待」、とあたしの口が声を発するよりも、わずかに早く。



――チュ。



……平然と、目の前の女子と唇を重ねてしまった。


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