きみのこと、極甘にいじめたい。
 



昨日は部活帰りの理太と、バイト帰りのあたしの生活リズムが違ったせいか、家で顔を合わせることはせずに済んだ。



そして今朝、一応朝食は用意しつつ、さっさと家を出させてもらった。


……つまり、理太と一度も口をきいてないし、顔さえ合わせてない。



そんな、朝の校内は……やっぱり理太の話題でもちきりだった。


学年違う人まで話題にしてるじゃん……!


やっぱり、理太ってすごいモテる人なんだな……。


突如頭をかすめたキスの光景に、じくりと胸が痛くなる。


……なんで、こんなに嫌なんだろう。


もう理太のこと好きなんかじゃないのに。


何、傷ついてんだろう。


「おっはよー素直!」


ドンと背中を押されて、前によろけてしまい、驚いて振り返ると。


別のクラスの友達がいた。


「……もー、みほりん! 背後は卑怯でしょ!」


「ごめーん、そんなことよりさぁー」


すぐに腕をがしっと組まれて、興味津々の目がきらきらとあたしを向いている。



「素直の親戚の理太って、頼めばキスしてくれるってマジ!?」


「な……」


なんっていう噂がこの数時間で回ってるの……!?


「ちょっと待ってよ、そんなの嘘だって!」


「えー!? デマなの?!」


「そう! デマ! 全部昨日のは何かの間違いなの!」



と、こういう絡みを、たくさんの生徒から散々うけては火消しをして、教室にたどり着いたころには息切れしていた。



「……つかれた」


みんなの噂話をひとことでまとめると、理太は頼んだら誰にでもキスをしてくれるチャラ男。



そんなわけないもん。


……いや、チャラいってのは、正解だと思うけど。


でも頼めばキスをしてくれるようなクズな男子ではないでしょ……?


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