きみのこと、極甘にいじめたい。
すると彼はすぐに視線をテーブルへと滑らせてしまって、


「おじさん、たばこやめるって言っときながら、また灰皿とライター出しっぱなしだね」


「……ほんとだ! また出してる!」



もう、お父さんってば意思が弱いんだから!


片づけてしまおうとしたあたしの手をかわし、

テーブルに乗った灰皿とライターを手繰り寄せたのは、理太だ。



「ねー、素直がモテるってちょっと、生意気だよね?」



無表情ながら、どこか面白くなさそうに言った理太は、



――シュ。



ライターの火をともしてしまった。


なにを……しているの。




きょとんとしていると、伏目の理太は、ふっと笑う。



「……あ、いけない。手が滑っちゃった」


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